確定申告の変遷:給与所得者が知っておくべき重要改正点と節税のヒント

はじめに

確定申告は、所得税の計算と納付を行う重要な手続きです。給与所得者にとっても、確定申告は避けて通れない義務であり、適切に申告を行うことが求められます。近年、税制の改正により、確定申告の手続きや申告内容に様々な変更が加えられてきました。本記事では、確定申告の変遷と給与所得者に関連する主要な改正点について詳しく解説します。

確定申告の手続き変更

確定申告の手続きは、年々変化してきました。最近の変更点としては、次のようなものがあります。

マイナポータル連携

2024年提出分の確定申告から、マイナポータルと連携することで、源泉徴収票や各種控除証明書のデータを自動的に取得できるようになりました。これにより、申告書の作成が大幅に簡素化され、給与所得者の負担が軽減されています。

マイナポータルへのデータ登録は任意ですが、活用すれば申告作業が効率化されるため、利用を検討するとよいでしょう。ただし、個人情報の取り扱いには十分注意が必要です。

インボイス制度対応

2024年提出分から、インボイス制度に対応した消費税の申告書も作成できるようになりました。インボイス制度は、適格請求書等保存方式の導入により、消費税の適正な転嫁を確保することを目的としています。

給与所得者が消費税の申告を行う機会は少ないですが、個人事業を営む方などは、インボイス制度への対応が求められます。必要に応じて、申告書への記入方法を確認しましょう。

非常災害損失の申告

特定非常災害の被災者向けに、損失申告用の付表が新設されました。災害による住宅や家財の損失額を申告することで、課税所得から控除され、税負担の軽減が図られます。

被災者の方は、この制度を活用することをお勧めします。ただし、損失額の計算方法や必要書類など、細かい要件があるため、事前に確認が必要です。

給与所得控除の変更

給与所得控除は、給与収入から経費を控除する制度です。近年、この制度に大きな変更がありました。

控除上限額の引き下げ

平成24年度税制改正以降、給与収入が一定額を超える場合の控除上限額が段階的に引き下げられてきました。具体的には、以下のような変更がありました。

  • 平成25年分より、給与収入1,500万円を超える部分について控除上限が設けられた
  • 平成26年度改正で、控除上限額と適用される給与収入の金額が引き下げられた
  • 平成30年度改正でさらに引き下げられた

このような改正により、高額所得者の税負担が重くなる一方で、基礎控除額が引き上げられるなど、中間所得層への配慮もなされています。

申告手続きの変更

給与所得控除の適用を受けるためには、従来は給与所得者の保険料控除申告書を提出する必要がありました。しかし、2025年分の年末調整からは、この申告書の提出が不要になる見込みです。

代わりに、会社から提供される「給与所得の源泉徴収票」の記載内容に基づいて、給与所得控除額が自動計算されることになります。事務手続きの簡素化が図られ、給与所得者の負担が軽減される見込みです。

個人住民税の変更

taxes

個人住民税に関しても、給与所得者に影響する改正が行われています。

給与所得者の定額減税

令和6年度から、一定所得以下の給与所得者に対し、市民税・府民税の定額減税が実施されています。対象は前年の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入2,000万円以下相当)の納税義務者で、本人および控除対象配偶者・扶養親族1人につき1万円が減税されます。

この制度は、地方自治体ごとに異なる可能性があります。自治体のウェブサイトなどで最新情報を確認し、該当する場合は減税申請を行いましょう。

配当所得等の課税方式の統一

令和6年度から、上場株式等の配当所得等および譲渡所得等の課税方式が、所得税と個人住民税で統一されました。これにより、申告手続きが簡素化され、納税者の便宜が図られています。

ただし、この改正に伴い、一部の収入区分については申告が必要になるなど、注意が必要です。株式投資を行っている方は、課税方式の変更点を確認しましょう。

森林環境税の創設

令和6年度から、森林環境税(国税)が新たに創設され、個人住民税均等割と併せて年額1,000円が徴収されることになりました。この税収は、森林整備や林業の再生に充てられる予定です。

徴収方法は自治体によって異なる可能性があるため、お住まいの自治体の情報に注意が必要です。この税金は、森林環境の保全という重要な目的があるものの、新たな負担となることは事実です。

その他の制度改正

housing

確定申告に関連して、その他にも様々な制度改正が行われています。

住宅ローン控除の拡充

2023年度から、住宅ローン控除の適用期間が延長されました。さらに、一定の条件を満たせば、床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅も対象となるよう、制度が拡充されています。

住宅ローン控除は、毎年の税負担を軽減できる有利な制度です。マイホームを購入する際は、この制度の活用を検討しましょう。ただし、適用要件は複雑なため、詳細を事前に確認する必要があります。

子育て支援の強化

子育て支援の観点から、国や地方自治体からの保育料助成などが非課税となりました。この改正により、子育て世帯の経済的負担が軽減されることが期待されています。

保育料助成以外にも、様々な子育て支援制度が存在します。子育て中の方は、活用できる制度がないか確認することをお勧めします。

まとめ

本記事では、確定申告の変遷と給与所得者に関連する主要な改正点について解説しました。確定申告の手続きや申告内容は、時代とともに変化してきており、最新の情報に常に注意を払う必要があります。

給与所得者の方は、自身に適用される制度改正を確認し、節税機会を見逃さないよう心がけましょう。また、税制は社会情勢を反映して変化していくものであり、今後も給与所得者の生活に影響を与える改正が行われる可能性があります。適切な申告を行うために、最新の情報収集に努めることが重要です。

よくある質問

マイナポータルの活用について

マイナポータルと連携することで、源泉徴収票や各種控除証明書のデータを自動的に取得できるようになりました。これにより、申告書の作成が大幅に簡素化され、給与所得者の負担が軽減されています。マイナポータルへのデータ登録は任意ですが、活用すれば申告作業が効率化されるため、利用を検討すると良いでしょう。ただし、個人情報の取り扱いには十分注意が必要です。

非常災害損失の申告について

特定非常災害の被災者向けに、損失申告用の付表が新設されました。災害による住宅や家財の損失額を申告することで、課税所得から控除され、税負担の軽減が図られます。被災者の方は、この制度を活用することをお勧めします。ただし、損失額の計算方法や必要書類など、細かい要件があるため、事前に確認が必要です。

給与所得控除の変更について

給与収入が一定額を超える場合の給与所得控除上限額が段階的に引き下げられてきました。このような改正により、高額所得者の税負担が重くなる一方で、基礎控除額が引き上げられるなど、中間所得層への配慮もなされています。また、2025年分の年末調整からは、給与所得者の保険料控除申告書の提出が不要になる見込みです。

個人住民税の変更について

令和6年度から、一定所得以下の給与所得者に対し、市民税・府民税の定額減税が実施されています。対象は前年の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入2,000万円以下相当)の納税義務者で、本人および控除対象配偶者・扶養親族1人につき1万円が減税されます。また、配当所得等の課税方式が所得税と個人住民税で統一されたことで、申告手続きが簡素化されています。